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安藤至大・高橋亮子(2021年)日経BP社/日本経済新聞出版

NEWS

2021-09-15
  • 書籍が出版されました(1版1刷)。
  • 2021-09-10
  • 本書のはじめにと目次を掲載しました。
  • 2021-09-01
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  • はじめにと目次

    本書のはじめにと目次
  • preface.pdf


  • 教授からの挑戦状①

    この課題は、他の学生が書いたエントリーシート(ES)の内容を添削することを通じて、ESを読んで評価する立場からどのように見えているのかを理解することが目的で実施しています。 具体的には、

  • (1) どの部分にどんな問題があるのかをできるだけ多く指摘する
  • (2) 問題がある部分をどのように修正すればより良いものになるのかを検討する ことが求められています。

    なお以下での指摘事項は、すべてを網羅しているわけではありません。皆さんの視点から、もっと改善できるポイントを探してみてください。

    ケース1(不動産開発の会社)志望動機

    1. まず改行や段落分けができていないので、非常に読みにくい文章になっています。

    2. 文字数も足りていません。800字以内という条件なのに、この志望動機は485文字しか書かれていません。伝えたいことは他にないのでしょうか。

    3. 最初に、文章の構成や結論から書いたほうが良いでしょう。例えば「志望した理由は3つあります」などといった文章から始めてはどうかということです。

    4. 文章の主語と述語が対応していません。最初の一文だけを見ても、「私は」から始まって「思ったからです」と結ぶのは、日本語として読みにくいですね。他にも「企業パンフレットを見て」で始まり「充実しています」で終わる文章があるなど、文章力にかなりの課題があります。

    5. 「買い物をしていて(中略)魅力を感じています」といった表現は、ひとりの消費者としての視点からの感想となっています。他にも買い物がしやすい店舗はあるはずで、これでは 「当社を志望した理由」としては弱いと考えます。自分自身が企業選びの軸としている考え方を示しながら、なぜこの企業で働きたいと思ったのかを考察して書くことが求められています。

    6. 「貴社の安定性も志望した理由」という記述がありますが、安定性を重視しているということは、激しい競争に晒されている民間企業には一般的にはあまり好まれない人物像です。どのような書き方をすれば、安定した企業で楽に働きたいといった自分本位の考え方ではなく、企業側の視点からも納得のいく内容として伝わるのかをよく検討する必要があるでしょう。

    7. 志望動機の後半では、働きやすさばかりを重視して志望しているように感じられます。そのため自分自身がその企業でやりたいことやなぜ志望しているのかが伝わってきません。働きやすさを志望動機として書いても良いのですが、やはりなぜその企業なのかが明確になるように、自分自身の価値観と合わせて長期的に働き続けたいという意思が伝わる内容にしたほうが良いでしょう。

    8. ところどころに「今の時代にあっている」といった、企業のことを上から目線かつ自分本位で評価するような記載があります。読む側がどのように感じるのかを考えながら表現を見直してみましょう。

    ケース1(不動産開発の会社)学生時代に力をいれたこと

    1. こちらも志望動機と同様に、段落分けがなく非常に読みにくい文章になっています。見た目のバランスも考えましょう。

    2. また文字数も足りていません。800字以内という条件で501文字では少なく感じます。

    3. 文章の構成や結論から書きましょう。このエントリーシート(ES)を読む人は、あなたのESを読みたくて読んでいるとは限りません。おそらく忙しい仕事の合間や残業時間に仕方なく評価しなければならない、また締め切りギリギリに読んでいるといったことを想像してみてください。どのような構成にすれば、相手にストレスなく読んでもらえるでしょうか。

    4. そもそも不動産開発の会社に対して、「私は服が好きなので」ということが最初に出てくると、それならなぜ衣料品メーカーや販売の仕事に就かないのかと疑問を抱かせてしまいます。

    5. アルバイトで身についた強みは何か、また具体的にどのような取り組みを行なったのかなどが見えてきません。小説ではないので、文章から読み取ることを読者に求めるのではなく、明記した方が良いでしょう。また「笑顔で接客すること」はサービス業であれば当たり前のことであり、このESを読む側に対して追加的な情報が提供されていません。より具体的に、自分自身しかわからない工夫や努力の内容、またその効果や学んだことを書く必要があるでしょう。その際には数値などが入ると具体性が出ます。

    6. 「お客様の好みに合わせた服を接客しなければいけません」のように、日本語として不自然な文章が目立ちます。

    7. 「お客様からも感謝をもらう嬉しさ」については、嬉しかったのはわかります。しかし嬉しさを感じた先に何を学んだか、今後自分自身がどうありたいかを伝えたほうがより良い文章になるでしょう。

    8. 「また高校時代」から始まる文章も、やはり日本語として不自然です。自分が書いた文章を一度ゆっくりと音読してみると、引っかかるポイントを探すことができるかもしれません。

    9. そもそも高校時代の話は必要でしょうか。字数制限もある中で、他の内容を書くよりも効果的でなければ意味がありません。例えば、高校時代から続けているバドミントンという表現だけでも十分かもしれません。

    10. また「バトミントン」はバドミントンの誤記ですね。自分がやっていたスポーツの名称を間違っているようでは、真面目に取り組んできたのか疑わしく感じてしまいます。

    11. 最後に「粘り強さや忍耐力が身についた」としていますが、紹介されるエピソードからはそのことがうまく伝わってきません。バドミントンに関して、県大会への出場は叶わず、また大学でも週3回の練習というのでは、それほど「粘り強さや忍耐力」があることが見えてこないのです。同じエピソードでも、伝え方によっては受け止め方が変わるかもしれません。検討してみましょう。

    12. 学生時代に力を入れたこととして、アルバイトとスポーツのみを挙げています。これだと評価する側からは、学業面ではどうだったのかが気になります。大学での研究・学習面にも触れておくか、もしESには書かないのであれば、面接などで質問を受けることを予想して準備しておくと良いでしょう。

    ケース2(食品業界)志望動機

    1. 「志望理由は3つ」などと最初に明示されていること、また段落分けがされていることから、ケース1のエントリーシートよりは読みやすいものとなっています。

    2. 文字数についても、764文字ですので、十分な分量だといえます。

    3. 「興味を持った」や「共感した」という表現が弱く感じられます。言い方を改善できないか検討したほうが良いでしょう。

    4. 安全性やロングセラー商品が多いことが素晴らしいと感じているのはわかります。しかしそのことだけが書かれていると、新しいことにチャレンジする意欲がないと捉えられてしまう懸念があります。企業としては、成長するために、新たな挑戦や新しいビジネスモデルを考えつく人材も欲しいと感じているでしょう。どのような表現を追加することが必要か検討してみましょう。

    5. 「愚直に」という表現が使われています。これは自分のことを謙遜して言うときには使っても良いですが、他人や相手の企業については使わないほうが良いでしょう。単純な褒め言葉ではなく、正直ではあるが気が利かない、変化に対応できないといったネガティブな意味もある言葉だと捉える人も多いからです。言葉の選択で少しでも迷ったら、辞書を引いて意味を確認するようにしましょう。

    6. 志望動機として、具体性がなく、本当にこの企業でなければダメなのかといった点が伝わりにくい文章だと感じます。一つ目の事業内容、また二つ目の安全性のどちらについても、食品業界の他の企業でも成立する内容です。

    7. 全体的に当たり障りがない文章です。自分がなぜ食品業界を志望したのかが伝わるような具体的なエピソードがあったほうが良いでしょう。

    ケース2(食品業界)学生時代に力をいれたこと

    1. 文章の構成や文字数については問題ありません(791文字)。

    2. 志望動機とのつながりを意識してみると良いでしょう。この学生時代に力を入れてきたことでは、「迅速な対応力」と「理論を実践に移す行動力」を挙げていますが、それは食品業界のこの企業で重要な能力でしょうか。志望動機からは、取り扱う商品への自信や安全性を重視する人物像が読み取れましたが、ここで挙げた二つの能力との関連を意識して整理してみましょう。

    3. 1つ目の強みとして挙げたゼミにおける情報共有の話については、ゼミ担当教員やゼミ長ではなく、あなたひとりの取り組みによるものかという点に疑問を持たれてしまうことが考えられます。本当にこの学生が28名のゼミ生のことを考えて仕組みづくりをしていたのか、またゼミで1人も欠けないというのは本当かなど、面接に進むことができた場合には確認されるはずです。自分の貢献を大袈裟に書いていないか、また具体的な経緯を尋ねられた場合に答えられるのかを確認しておきましょう。

    4. バスケはバスケットボール、ランチMTはランチミーティングのように、省略せずに書きましょう。

    5. 2つ目として挙げている「理論を実践に移す行動力」の説明は、具体性のある良いエピソードです。これがどう企業の中でどのように活かせるのかをもう少し丁寧に説明すると社会人にも伝わりやすいと思われます。特に、「多面接触の理論」は、経済学を学んでない人からすると見慣れない言葉です。面接では必ず質問されるはずですので、専門外の人にもわかりやすい説明ができるように準備しましょう。

    6. エントリーシートに書く内容というのは、自分のことを知ってもらうだけでなく、直接会って話をしてみたいと思わせるものである必要があります。そのために「この点について聞いてみたい」と採用担当者が感じるような引っかかる部分を作っておくと良いでしょう。この学生時代に力を入れたことでは、情報共有のシステムとは何か、また多面接触の理論とは何かがその引っかかるポイントになります。

    ケース3(製造業)志望動機

    1. なぜ製造業を志望するのか、またなぜこの会社なのかが伝わりにくい志望動機です。どんなメーカーでも、自社の技術や商品はありますし、人の役に立つ取り組みをしているはずです。

    2. 伝統と革新性の両立というのも、多くの製造業に共通することだと感じます。メーカーにとってブランドイメージというのは財産であることから、伝統を維持することも重要ですし、新たな製品を開発して市場に投入していくことも必要です。他の企業ではなくこの企業でなければならない理由とは何かを考えてみましょう。

    3. 「共感」という言葉が多用されていて、表現として稚拙に感じます。うまく言い換えるなどして、読みやすい文章になるようにしましょう。また共感したからというのが志望動機というのは弱く感じます。

    4. 志望理由の1つ目と2つ目は、やや似通っています。文字数の制限がある中で、どのようなことを伝えるのが効果的なのか再検討してみましょう。例えば、具体的な商品名やエピソードを出すなど、もう少し具体的な記述をすると、より強い印象を与えることができるはずです。

    5. 「メーカーにおいては」「非常に良い取り組み」といったような上から目線の記述が目立つため、言い回しを改善すると良いでしょう。

    ケース3(製造業)学生時代に力をいれたこと

    1. 「率先して動く行動力」があるというのはとても良いことです。ここではゼミにおける活動を具体例として出していますが、他にはどのような事例があるのかを尋ねられたら答えられるようにしておきましょう。

    2. またこのゼミのエピソードについても、一人の学生がリーダーシップを発揮してカフェ兼情報発信スペースを作ったというのは、おそらく非現実的だと捉えられてしまいます。より具体的に、自分が担当した部分はどこであり、他の学生と協力した部分はどこかなどを明確に説明できるようにしておくと良いでしょう。

    3. そして地元商店街へのプレゼンテーションなども含めて、現実に人や組織を動かしていく際には、さまざまな課題もあったはずです。それにどのように向き合ったのか、またそこから何を学んだのか等を説明できるようにしましょう。

    4. 2つ目として「負けず嫌い」を挙げていますが、学生時代に力を入れてきたことが「負けず嫌い」というのは、質問への答えとして不自然です。例えば、「簡単には諦めずにものごとに取り組むこと」など、別の表現を考えてみましょう。

    5. またこの負けず嫌いな性格が仕事の面でどのように活かせるのか、特に製造業においてどのようなときに必要になるのかを明記できれば、より良い文章になります。

  • 教授からの挑戦状②

    1. 面接と評価シートを考える

    まずは評価シートのサンプルをダウンロードして印刷しておきましょう。

    評価シート
  • evaluation.docx
  • evaluation.pdf
  • ここでは全部で20の項目について、5段階評価になっています。それぞれどのような場合に高く評価されるのかを考えてみましょう。

    1. 例えば清潔感というのは、家を出る前や面接会場についてからなど、服が汚れていないか、ネクタイが曲がっていないか、髪型は整っているかなどを確認しておく必要があります。

    2. 視線や表情については、面接の練習を録画しておいて、視線が泳いでいないかなどを確認すると良いでしょう。また自分で見るだけでなく、ゼミやサークルの先輩などにみてもらうのも効果的です。

    3. 声の大きさや言葉遣いなども、練習で改善できます。

    また自分が準備している自己PRや志望動機を振り返って、それを評価すると何点になるのかを計算してみましょう。個々の評価項目について評価者が点数をつけるために十分な情報提供ができているかも確認してみてください。

    1. 全部の項目で高得点を取ろうと無理をする必要はありません。面接時に、相手が想定しているよりも長時間一方的に話し続けることは、逆効果です。自分の性格や得意分野を意識して、どの項目では高い点数を取りたいのか、またどの項目ではそこそこの点数で良いのかといったメリハリを考えておくことも現実的な取り組みとしては不可欠です。

    2. 話の中で、例えば主体性や行動力、また交渉力など、相手企業が求めている資質とは何かを理解した上で、具体例を考えておきましょう。

    なおこのような評価基準を理解しておくと、友人と一緒に行う面接の練習などでも、どのような点に注意しながら話をすれば良いのか、また評価すれば良いのかが明確になります。マイクロソフト社のWord形式のファイルも掲載していますので、自分が志望する業界に合わせて評価項目や点数配分を適宜修正しながら利用してください。

    2. グループワークの課題を検討しておく

    以下では二つの課題例を用いて、グループワークへの準備について考えます。グループワークでは、新聞や雑誌で取り上げられることが多い旬の話題や企業が直面している課題がテーマとなることが一般的です。

    取り上げられることが多いテーマについてあらかじめ調べた上で、最低限の知識は身に付けておく必要があります。

  • 課題1:ジョブ型雇用

    最近、ジョブ型雇用に注目が集まっています。それがどのような内容なのかを整理した上で、〇〇社では導入すべきか否かを提言してください。

    1. まず様々なキーワードの意味を調べるためには、就活用やビジネス用の一般常識が網羅されている本を読んでみると良いでしょう。選考試験まで時間がなければ、もっとも効率的な方法です。

    2. 次に、多くの専門用語が人によって異なる使われ方をしている可能性には注意しましょう。例えばジョブ型雇用という言葉も、論者によってかなり幅のある使われ方をしています。まずは公的な定義がないかを確認すること、例えば働き方についての言葉であれば、厚生労働省の資料やホームページ等を参考にすることが望ましいでしょう。

    3. その上で、自分なりに、今までの日本型雇用と比べて、何が良い点なのか、また何が問題なのかを整理しておく必要があります。また、自分自身が働く環境として、ジョブ型雇用が導入されていることがどのような意味を持つのかまで考察しておけると、ディスカッションの準備としては十分です。

    4. もし、ディスカッションのテーマとして提示されたジョブ型雇用のことを全く知らなかったらどうすれば良いのでしょうか。まずは「知ったかぶりをしないこと」が大前提になります。例えば、他に話し始めた学生がいたら「議論を明確にするために、定義を確認したい」といった発言を通じて、内容をできるだけ把握するように努力しましょう。

  • 課題2:待機児童

    最近、首都圏を中心として、保育所に子どもを預けることが難しい待機児童の存在が大きな社会問題として捉えられています。なぜ待機児童が発生するのかを説明した上で、この問題を解決するための方法を提案してください。

    1. 待機児童の定義を調べるためには、インターネット検索で「待機児童とは 厚生労働省」などといったキーワードで検索するのがもっとも効率的です。その際には、様々なホームページ等で多様な定義がなされていますが、公的な定義を探すようにしてください。

    2. 待機児童の定義が時期により変化していることにも注意しましょう。例えば、特定の保育所を希望している場合には待機児童の対象にはならないといった数え方の変化があります。

    3. この課題では、なぜ待機児童が発生するのかをまず聞いています。経済学部で学ぶ需要と供給の関係からは、サービスの利用料金が低すぎる場合には、利用希望者が余ってしまう超過需要が発生すると考えることができます。自分の言葉で説明できるように考えてみましょう。

    4. また「この問題を解決するための方法」については、何が政策目的なのかを考えてから手段を検討する必要があります。例えば、単に待機児童を無くすだけでよければ、需要と供給の関係だけに注目すれば、利用料金を引き上げれば利用希望者が減り、待機児童の問題はなくなります。しかし社会的に求められているのは、そのようなことではないはずです。